高機能舗装の損傷過程の推定

1. 高機能舗装の特徴
 (ア) 粒度分布が開粒度
 (イ) アスファルトの種類はポリマー改質アスファルトH型(-F)
 高機能舗装では舗装内を水が通る空隙ができるように粒度分布は開粒度となっている。そして、接触面の少ない骨材をしっかりと繋ぎとめるように丈夫なポリマー改質アスファルトH型(-F)を使っている。 
 高機能舗装におけるタイヤからの荷重の伝播状況を考えてみる。弾性係数の小さなポリマー改質アスファルトH型(-F)は、荷重がかかった時変形し易いため、骨材の動きが大きいと推定される。
 伸び縮みの容易なポリマー改質アスファルトH型(-F)を使用した合材では、荷重を受けた時の骨材の変位はアスファルトの弾性変形限界を超えず、アスファルトの損傷は小さいと推定される。また、空隙率が大きい高機能舗装では、空隙部分は荷重を伝えられないため、荷重が加わった時、荷重の伝達は大きな骨材を通して行われ割合が大きいと推定される。さらに、アスファルトの変形により水平方向の変位は吸収され周囲への影響は小さいと推定される。密粒度舗装では大小の骨材が噛み合い、骨材同士がより変形し難いアスファルトにより結合されているため、荷重による骨材の変位が広く周囲へ影響を与えるのと対照的である。そのため、高機能舗装では、荷重直下付近の表層の粗骨材に接する基層部分が大きな力を受けることになると推定される。
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 以上のことから、高機能舗装では基層の変状が密粒度舗装より発生しやすいと推測される。また、基層上部の変状により、設計条件を満たしている舗装構成であっても、表層と基層間の防水の破れにより損傷の発生が推測される。
 ポリマー改質アスファルトH型(-F)は、ポリマーマトリックスの中にアスファルト固形分が分散した形態をとっている。ポリマーマトリックスは、引っ張り強度は大きいが弾性係数が小さく、破断せずに容易に伸び縮みし易い性質を持っている。そのため、変形に対してポリマーマトリックスの破断が起き難く、表層のひびわれが発生し難いと推測される。
 また、ポリマー改質アスファルトH型(-F)では、可塑性のあるアスファルト固形分がポリマーマトリックス中に分散した状態になっている。そのため、荷重を受け続けると、アスファルト固形分が変形、それに伴ってアスファルトも変形し、同じ荷重に対する変形が大きくなる。その結果、表層の支持力が低下し、基層により大きな負担をかけることになる。
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 高機能舗装ではひびわれ等の発生により表層と基層間の防水が破れたとき、密粒度舗装と比較して、多量の水が基層へ浸入することが予想される。すなわち、表層内の空隙に降雨等で水が存在する状態でタイヤが通過すると、荷重を受けた箇所が変形し空隙内の水圧が上がり、ひびわれを通って基層内へ加圧された水が浸入する。密粒度舗装では、水は路面表面を流れてしまい、加圧浸入するのはひびわれ付近にタイヤが通った場合のみである。ひびわれ付近が滞水する時間も路面勾配や飛沫により排水され、高機能舗装の表層内の滞水時間と比べると非常に短時間である。このことから、高機能舗装の基層への水の浸入量が多く、損傷への影響が非常に大きいことが予想される。
 舗設時の問題として、高機能舗装の合材は施工温度が高く、冷め易い点が上げられる。
ダンプカー1台分の合材の中でもフィニッシャーに降ろした時表面にあり舗設の遅い部分では温度の低下が生じ、品質が劣る部分が生じ不均一になる。
 開粒度で空隙率の大きい高機能舗装では、粗骨材を支持するアスファルト・細骨材等が少ないため局所部分の施工欠陥が骨材飛散の原因となる可能性が大きい。
2. 変状発生要因
 高機能舗装の特徴として骨材飛散による損傷の発生がある。高機能舗装の特徴として挙げられる開粒度、高空隙率、アスファルトの低弾性係数、合材の舗設時の高い温度および冷め易さは、いずれも、骨材飛散の原因となる要因といえる。
 一方、密粒度舗装をみてみると粗骨材の間はアスファルト・細骨材等で充填されている。そのため、タイヤからの荷重を受けた粗骨材の動きは充填されたアスファルト・細骨材等により抑えられる。さらに、高機能舗装のアスファルトと比べて弾性係数が大きいので、骨材の動きが抑えられることからアスファルトの疲労による破損が抑えられる。これらのことから高機能舗装には骨材飛散の要因が多くあることが理解できる。
 高機能舗装では、タイヤ表面は、粗骨材が並び粗骨材の間は空隙になっている。タイヤからの荷重は、まず表面の粗骨材に伝わる。表面の粗骨材は、粗骨材の下のほうでアスファルトや細骨材等及び接触している粗骨材に支持されている。表面の粗骨材が1つ抜けると、隣接する粗骨材が欠けた粗骨材の分の荷重を分担することになる。隣接する粗骨材は、増えた荷重の分だけ変位が大きくなる。変位の大きくなった粗骨材のアスファルトは損傷が始まり、粗骨材が飛散するようになる。1つ粗骨材が飛散すると隣の粗骨材の荷重が増し、ドミノ倒し式に次々と骨材の飛散が始まる。骨材飛散により表層が薄くなり、基層に荷重が大きく掛かるようになる。荷重が大きくなることにより基層がより大きく変形し、表層・基層間の防水が壊れたり、表層にひびわれが発生する。
(この骨材飛散の補修方法として、常温補修合材による飛散粗骨材箇所の穴埋めをできるだけ早くおこなうことが効果的である。常温補修合材が荷重を分担し周囲の骨材の緩みを抑えることができるからである。)
 その他表層の変状として、横断管等埋設箇所のくぼみ、橋梁やカルバート前後のひびわれ、切り盛り境のひびわれ、感温クラックが発生している。さらに、切削オーバーレイによる補修箇所で下の層の変状の影響によると推定されるひびわれが多数発生している。
 横断管等の埋設箇所では、埋め戻し部の締め固め不足部分が締まり、くぼみが発生することが多い。
横断管等埋設箇所にくぼみが発生すると、くぼみ位置では、タイヤがくぼみに落ち込むことにより、衝撃荷重が加わり、変形が大きくなり、基層にひびわれが発生する。ひびわれの発生により、表層・基層間の防水が壊れ、表層から基層への水の浸入が始まる。この時、変形しやすく丈夫な表層にはひびわれが発生していないことが多い。
 橋梁前後に横断ひびわれが発生することが多い。ひびわれは、橋台の埋め戻し部の端部付近に位置することが多い。埋め戻し部の盛土が締まり、沈下し、埋め戻しの端部で横断ひびわれが発生したものと考えられる。この横断ひびわれと橋台の間も盛土が締まり、沈下し、ひびわれが発生していると推定される(この箇所は初期の段階ではひびわれが表面に見えない)。しかし、ひびわれが見えるようになるとひびわれの周囲が広くくぼむ。初期の段階で小さなひびわれが発生し、表層・基層間の防水が壊れ、水が浸入して、支持力が低下している。そこへ、ひびわれの発生による水が加わり広くくぼむものと推測される。
 カルバートの前後についても、埋め戻し部の盛土が締まり、沈下がみられる。橋台の埋め戻し盛土部と同様に小さなひびわれが発生し、表層・基層間の防水が壊れ、水が浸入して、支持力が低下していると推測される。
切り盛り境の路面にも、ひびわれが発生する。盛土が締まり、沈下するため、締まっていて沈下の起こらない切土部との境にひびわれが発生するものと考えられる。ひびわれの発生により、表層・基層間の防水が壊れ、表層から基層への水の浸入が始まる。盛土部の沈下により切土部との境にずれが生じるため、そのずれに沿って水が深くまで浸入することが推測される。
 長期間の供用により感温クラックが多数発生し、ひびわれ箇所で、表層・基層間の防水が壊れ基層以下の変状が進んでいる。
 感温クラックという言葉は聞き慣れない言葉であるが私は次のように解釈している。寒冷地での低温クラックと同じように、温度低下による収縮により発生するひびわれである。温暖地でも長年の供用により多数の横断クラックの発生が見られる。
 感温クラックはトップダウンクラックであるが、舗装版はひびわれ箇所で自由端になるため下層への荷重が大きくなり、下の層の変形が大きくなり、表層・基層間の防水が壊れ、基層に水が浸入することとなる。高機能舗装では、表層アスファルトの弾性係数が小さいため、感温クラックの発生は少ない。
 密粒度舗装から高機能舗装に切削オーバーレイにより変更した箇所で、感温クラックによるとみられる損傷が多数発生している。密粒度舗装に生じた感温クラックの基層以下の処理が不十分であったとみられる。
 高機能舗装の補修においても、切削オーバーレイをおこなった箇所に、下層の損傷に起因するとみられるひびわれが多く発生している。水の浸入による下層の劣化対策を行わなかったため支持力が得られず、表層(・基層)が変形し、ひびわれに進展したものと推定される。補修直後は目詰まりが無く、表層の透水性が良いため、水の浸入が大きく、損傷の進展が速い。
3. ポットホールへの進行過程
 高機能舗装のポットホールは、骨材飛散によるポットホールを除くと、表層内のポットホールの発生は少なく、基層までのポットホールが多く発生する特徴がある
 高機能舗装で特徴的なポットホールの発生は次のように進展する。
第一段階では、表層と基層間の防水が壊れる。表面のくぼみ、線状クラック等軽度の損傷が見られることもあるが、損傷として気が付かないことも多い。
 高機能舗装には、ポリマー改質アスファルトH型(-F)が使用されている。ポリマー改質アスファルトH型(-F)は丈夫で耐水性があり変形しやすいため、表層内での損傷の進展・拡がりは遅い。
 第二段階では、表層と基層間の防水が壊れることにより、基層に水が浸入し、水の影響により骨材からアスファルトの剥離が進む。骨材の動きが大きくなり、アスファルトの劣化および骨材が磨耗し、土砂化する。当初は、骨材のかみ合わせによる支持力により、表層への影響は小さい。しかし、剥離の進展により支持力を失い、表面への影響が現われ始まる。また、浸透した水はさらに下層まで影響を与える場合がある。
 第三段階では、基層以下の支持力の低下により、表層の変形がアスファルトの変形限界を超えて、アスファルトが破断し、骨材が飛散し、ポットホールとなる。
4. 水の浸入機構
 密粒度舗装では、降水が止むと直ぐに排水され、ひびわれから水が入る機会がなくなる。そのため、基層への水の浸入は多くは無いと経験上考えている人が多いように思われる。しかし、高機能舗装は、表層・基層間の防水が壊れることにより基層内に入る水の量が非常に多くなる構造になっている。
 表層内の空隙に水が存在すると、タイヤの通過により加圧された水が、ひびわれから基層内に浸入する。加圧されることにより小さなひびわれからも水が浸入し、アスファルトを劣化させる力も強くなる。
 表層内に水が滞水する間は、タイヤの通過により加圧された水がひびわれから基層内に浸入し、損傷を引き起こすことになる。また、タイヤの通過により舗装版が上下する。持ち上がる時、舗装版の下は陰圧になり、滞水した水を舗装板の基層以下へ吸い込み、損傷を引き起こすことになる。さらに、路面がたわんだ時に密粒度舗装では滞水位置でひびわれが閉じるのに対して、高機能舗装ではひびわれが開いてしまい、水が浸入しやすくなる。
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 表層内に滞水する時間が基層への水の浸入量の目安になるといえる。降水がなくなっても空隙内に水がある間は基層への水の浸入は続いている。
 高機能舗装では、表層の空隙を流れる水は直ぐには無くならない。表層内を流れる水は流れる速さが遅く排水に時間が掛かる。縦断勾配のあるところではでは、路肩へ排水されなかった水は、勾配により流れ下り表層内の空隙を長時間にわたり満たすことになる。
 サグ部の内カーブ側は勾配の関係で、路面の水が集まり表層の湿潤状態が長く続くところである。路肩の路面排水ののみ口が水の集まるところからずれたりしていると非常に長時間湿潤状態になる。 また、のみ口付近では、水は表層内を通って流れ立てしまうため、塵芥・ごみは路面に残されてしまうため清掃を頻繁におこなわないと、排水機能が損なわれてしまう。
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 密粒度舗装から切削オーバーレイにより高機能舗装に変えた場所は、路肩が密粒度舗装になっている場合が多い。ここでは、水は表層分の厚さだけ乗り越えなければならず路肩に流れることができない。のみ口のところは、路肩も高機能舗装にして水の通り道を作ってある。しかし、こののみ口の高機能舗装箇所に水が集まらなければ、水は排水されない。左右にカーブの連続した道路では片勾配の向きが変わり、水は路肩から車線へ流れ込み、路肩を離れるため、のみ口に流れ込まず、排水されない水も多い。
 車の通過に伴い、わだち部には多かれ少なかれ、わだち掘れが発生する。小さなわだち掘れであっても、水はわだち部に集まる。基層表面もわだち掘れになっている場合が多く、表層内でも路肩への排水はおこなわれないことが多い。密粒度舗装の場合はわだち部に集まった水は、タイヤがの通過により飛沫となって排水されてしまう。しかし、高機能舗装の場合は、飛沫となって飛ぶことは無く、わだち部に集まった水はひびわれがあると、タイヤにより加圧されて、基層へ浸入することとなる。少量の降水であっても水が集まり、基層へ浸入することとなる。
 切削オーバーレイによる補修を繰り返している箇所は、切削オーバーレイをしていない路肩部分が高くなる傾向がみられる。これによって、路肩への排水が妨げられ、わだち部に水が集まり、タイヤにより加圧された水の浸入が多くなる。
 路側線が溶融タイプのペイントで施工されていると、ペイントの厚みにより車線部分から路肩へ路面を流れる水の流れが妨げられて、路肩への排水ができずにわだち部へ水が集まることがある。
 本線と連絡等施設ランプの分合流箇所にはランプから水の流入のある箇所が多い。ランプは交通量が少ないので変状の進展が少なく軽度のわだち掘れが放置されている場合が多い。また、SAPAの出入り口でますに排水を集める形式のところが多く、生じた小さな不陸によりますに入らなくなった水がランプを通って本線に流れ込む場合が多い。
 通常、追越車線は大型車の交通量が少なく、亀甲ひびわれの発生は少ないが、追越車線の路肩にL型街渠が設置されている箇所では亀甲ひびわれの発生が多くみられた。そして、切削オーバーレイの補修後も短期間に再発生する場合が多く見られた。その理由は、次のように推測される。高機能舗装は空隙があるため、L型街渠と舗装との接触面積が小さく、接着力が小さいため、L型街渠と舗装の剥離が生じ易い。そこから、水が浸入し、基層以下が劣化したものと推測される。さらに、高機能舗装箇所の切削オーバーレイによる補修際、表層あるいは基層より下の層の水の浸入による劣化部分を補修せずに、比較的短期間で再発生する場合が多いように見うけられた。
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